中東というと、昔から暗いイメージで出張はあまり乗り気ではありませんでしたが、 ドバイというとちょっと行ってみたいかなという気持ちがあって、ドバイの引合がきた 時は二つ返事で取り組みました。2007 年のことでした。 その当時は、ドバイと言えば超高層ビルの建設ラッシュがあり、都市開発が急ピッチで 進められていて、世界中のセレブが遊びに行ったりしていたところでした。 椰子の木(パームツリー)の形をした埋立地が海岸沿いに造られ、そこに高級マンションが 立ち並び、セレブたちは自家用ヨットやボートで海に繰り出すのでした。そこの マンションをベッカムが買ったという話もありました。 海は透明度がすごく、近隣の海には熱帯魚が遊泳しているのが見てとれました。
その都市開発の一つとして、ドバイの沖合に世界地図を模した人口島群を造るという 計画があり、その島々への電気を供給するための電源としてバージ船に KU エンジン発電 設備を載せてそこへもっていき、近くに係留して電気を送るという計画を提案しました。
ドバイの開発を行っていた会社 Nakeel へプレゼンをして、その会社の CEO が金沢工場に 見学にきたりと、実現性が高いと思われましたが、結構コストも高く見積額も高かったので、 その会社も検討中ということで、計画は延び延びとなっていました。そうこうする内に リーマンショックからドバイショックが起こり、バブルが弾けてドバイは破綻して しまいました。後から思うと受注しなくてよかったです。受注して製作していたら、 お金をもらえず不良資産になるところでした。
仕事以外では、ラマダンの時期に行ったら昼食を摂るのに一苦労だったり、市中の レストランではビールがでないなどという点はありましたが、泊まった欧米系のホテル では、アルコールはOKでしたし、日本食レストランや居酒屋などがあって、特段不自由は 感じませんでした。 超高層ビルは、各々特徴のある形状をしていて、建築芸術という感じのものでした。 夜になると超高層ビルはライトアップされ、そのビル群の間にある高速道路を通ったら、 近未来都市に来たかのような感覚でした。世界一高いビルのブルジュドバイ(全高 828m) も当時は 2/3 くらいまで出来上がっていましたが、その当時でも見上げたら物凄く高い 印象が残りました。
ある時レストラン街を歩いていたら有名人を見かけました。直後に合流したO氏に 今さっきキャメロンディアスを見かけたと言ったら、どっちの方かと聞いてダッシュで 駆け出していきました。流石に場所柄、本当だろうと思ったのだろう。O氏のミーハー的な 面を垣間見た一瞬でした。後で考えたら、よく似た女性だった気がしました。(笑)
2010 年には、アルジェリアで入札の打合せがあるため出張に出ましたが、折角 アルジェリアまで行くのだからと、営業の策略でサウジアラビアの代理店に回って、 エジプトの拡販も実施することで、営業のF氏と 2 人でフランスからイスラム圏歴訪の 出張が始まりました。
アルジェリアへ行く前に、パリで一泊して飛行機を乗り継いでいくということでした。 F氏とは、折角のパリなので、夜はどこか有名なところにでもいこうかということになって、 有名なムーランルージュかクレイジーホースにすることとしました。何やら特別な ショーがあるみたいということで邪見な気持ちからクレイジーホースに入りました。 中に入ると場内は薄暗く、シャンパンが飲み放題ということで、それを飲みながらショーの 始まるのを 2 人して待っていました。待っていると続々とお客さんたちが入ってきました。
見るからにヨーロッパからの観光客たちという感じで、カップルもいました。この人たちも 邪見な気持ちを抱いてきたのかと考えていたら、愈々開宴の時間となりました。すると、 会場は真暗となり、ステージにスポットライトが当たると踊り子たちが出てきました。 F氏の期待通りの下半身は網タイツ、上半身は網手のみ、頭には鶏冠みたいな飾り物という 出で立ちですらっとしたスタイルで踊り始めました。傍目で見ていると、二人の日本人が 口ポカでステージに釘づけになっていたはずでした。そうこうしていると、そんな踊り子の 姿にも慣れ、パフォーマンスを見ていたら、すごい高い芸術を見た感じとなって、幕が 終わり外に出た時には、入る時の邪見な気持ちとは違い、すがすがしい気分(?)になって いました。
アルジェリアは初めての出張でした。昔、MAN のエンジンを 5 台、ベシャールという ところに FTK(Full Turn Key)で納めたプラントがあって、先輩のT氏やH氏が長期間 出張していて、帰ってきたらゲッソリ頬がこけていたということがあって、あまり よい印象はありませんでした。
打合せは SonelGaz という国営の石油公社の本社で行いましたが、会議室は コンクリートタイルの床にテーブルと椅子があり、薄暗い部屋でした。 入札のクラリフィケーション(質疑確認)を行いましたがあまり覚えていません。 それよりも、OFF の時の楽しい記憶が残っています。F氏とタクシーを借り切って観光を しましたが、小高い丘からの地中海の眺めは最高でした。レストランでは、ビールがあり 郷土料理みたいなものも美味しかったという印象です。その時の出張では、髭剃りを忘れて いて、髭も伸びてきたので現地の床屋に行きました。
それまでも海外出張に出ると、結構色々な国で床屋にいきました。理由は、日本に 比べると格安なのと、その国の流行のカットをしてもらうのにちょっと興味があったので。 アルジェでのカットは、200 円くらいで結構ふつうでした。 一番最初にローカルの床屋に行ったのは、現地に 2 か月ほどいたサイパンでした。 フィリピン人のお兄さんがカットしてくれましたが、髭剃りは薄い刃そのものを手に もってジャリジャリと剃るのでちょっと危険を感じながらいました。 その後は、パキスタン、バングラデシュ、タイ、エジプト、韓国などで床屋に行きましたが、 タイカットはもっこりとした頭になりました。いつも床屋に入って、’Hair-cut, please!’と 言って、手バサミでジェスチャーすると、OKと言ってやってくれました。 エジプトでは、ホテルの床屋でカット中に何やら話かけられたが、面倒くさかったので、 OK,OK と言っていたら、顔のマッサージをされて冷やされたり、温められたりして、 終わってみると側面は短めで頭頂部もやや短めという日本ではまずないだろうという カットに仕上がっていました。また頬はプルプルみたいになりました。値段は日本並で $30 くらいだったと思います。
韓国カットはそれ以上に短めでした。一番よかったのは、バングラデシュで、それなりに ふつうで日本よりも上手くカットされた感じで、料金は格安の 150 円くらいでした。
出張にいく時はいつもスーツケースに日本酒の 2L 紙パックとつまみを入れて行きました。 この時は、中東めぐりでアルコールが飲めないかもしれないということで、焼酎の パック(四合瓶)も入れたのでした。
アルジェのホテルの部屋で専ら飲んでいましたが、レストランにいく時にペットボトルに 焼酎の水割りを入れて持ち込んで料理を食べながら飲んだりしていました。この技は パキスタンでレストランに行った時にI氏と企んでやったもので、食事をしながら ペットボトルの水を飲みながら、何故か顔が赤くなっていって周りの人から注目されたり したものでした。
アルジェには 6 日間滞在しましたが、その次の訪問国はサウジアラビアでした。 アルジェを出発する朝、ふと思い出したのが、サウジではスーツケースの中をチェック されてアルコールが見つかると牢屋に入れられると。そして、牢屋に入ると日本人は おかまを掘られ、気が狂って出てくるという話。
ホテルを出る時は、まだお酒が残っていたので、急遽ペットボトルに入れ、飛行機に乗る までに消費すればいいかと思いました。フライトは朝の 9:30 発だったので、ホテルを チェックアウトした後、タクシーで空港に向かう際中からペットボトルをグビグビと 傾けるのでした。空港に着いてもまだペットボトルには残っていましたが、搭乗まで やや時間があったので、搭乗のセキュリティーに入る前に待合い椅子に座って最後の 一滴を飲んだのでした。貧乏性というか、アル中か?(笑) ほどなく、朝からほろ酔い気分で飛行機に乗りました。フライトは一旦エジプトの カイロ空港までで、そこでトランジットして、別の飛行機でサウジ入りしました。 サウジのリヤドという町に着いたのは、既に 22:00 を回っていたので、アルコールも 抜けて、手荷物検査も問題なく入国できました。牢屋に入れられなくて一安心。
以前、酒好きのO氏は、クェートに入る時お酒をビニール袋に入れて足首のところに 巻き付けて入ろうとしたら、身体チェックで見つかり、別の部屋に連れていかれ、 真っ裸になりけつの穴まで見られたと言っていましたが、没収だけで済んだようです。 また、営業のS氏は、英語が堪能なために入国の際の荷物検査に苛立って文句を言ったら、 同様に別の部屋に連れていかれ、けつの穴をチェックされたとのこと。ああ、恐ろしや! サウジアラビアでは、どこに行ってもアルコールは絶対に手に入らないといろいろ聞いて いたので、覚悟を決めてサウジ入りしました。空港を出て、タクシーを使ってホテルへ 着くと、もう真夜中でした。
ホテルは、Marriott Hotel でアメリカ系のホテルでした。 チェックインして部屋に入って冷蔵庫を覗くと、あっと思って、見慣れた Budweiser ビールの缶があるではないですか。
やったー、流石アメリカ系のホテル!ドバイの時も欧米系のホテルではアルコールが 飲めたことを思い出し、なんだサウジでも欧米系のホテルは違うんだと思って、缶を 取り出してみると、いつもとほぼ同じだがちょっとだけ違いがあって、NA Budweiser と あるではないですか。
缶を開けて飲んでみると味がいつもとちょっと違うなあと思いつつ、Budweiser シリーズの別の種類なのかなと思って、改めて缶を見直すと、NA のところに Non Alcohol と書いてありました。なんとも、ぬか喜びでした。
リヤドの次はジェッダという町に移動しましたが、流石に金持ちの国だけあって、 ショッピングモールには、一流ところのブランド店(Chanel, Viton, Bvlgari など)が軒を 連ねていました。サウジアラビアに滞在したのは、ほぼ 4 日でしたがこれ程長い休肝日は ありませんでした。肝臓クンには良い期間だったのだろう。
サウジの後は、エジプトのカイロに行きましたが、カイロではレストランでビールは 出るし、日本食も食べられ、天国にきたかのような感じでした。
イスラム圏の歴訪でしたが、2 週間強の日程で、アルジェで髭を剃った以降そのままだった ので、カイロで Consukorra(エジプトでガスエンジン 4 台を設置したプラントの商社 みたいな会社)との打ち合わせでは、現地人風の髭をはやした風貌で臨み、その風貌で 帰国したのでした。